そんなお悩みを抱える方にヒントとなる内容(News Picksセミナー)をご紹介いたします。
先日NewsPicksさん主催でキャリアに関するセミナーが行われました。
その中でもセッション後半で実施された法政大学 田中先生のお話があまりにも素敵でしたので、少しでも多くの人のキャリア形成に役立てばと思い、私の議事メモをベースにこちらで一部の内容を共有させていただきたいと思います。
本記事の内容
- やりがいと市場価値のどちらを取るべきか
- なぜキャリアを主体的に形成していくことが大切なのか
- 動的キャリアとは
- キャリアポートフォリオについて
本記事の信頼性
この記事を書いている私は、
- 海外MBA進学・2度の転職経験をもとに自身が所属する香港の団体でキャリア相談を実施
- SNSを通じてES・履歴書・職歴書・志望動機書に関するキャリアサポートを実施
- ドイツ勤務、外資系メーカーへの転職を経て、現在は外資系コンサルティングファームでビジネスコンサルタント職に従事
この記事はセッションの内容をもとに筆者主観を一部含めた内容となっています。
(本ページは一部プロモーションが含まれています)
ファーストキャリア形成期(新卒~社会人10年目)
ファーストキャリア形成期の具体的な時期
- 文系:大学出て32歳
- 理系:大学院卒業して34、5歳
社会人最初の10年は、自分のキャリアが見えないからきついと田中先生は言います。
多くの人が自分のキャリアをこれからどうしていくべきか悩んでいます。
やりがいを選ぶのか、それとも市場価値を高めていくのか。
筆者も最近本当に悩んでいます。
田中先生によると、このようにキャリアに悩むことは正しい反応だそうです。
そして、キャリア形成をしていく上での正しい反応であると理解した上で、これらには処方箋や解決方法があることを知ってほしいと言います。
やりがい?それとも市場価値?
結論、やりがいと市場価値は両立できる、両立していくべきである。
やりがいを求めるから自分の市場価値を高めない、といったことはないんですね。
稼ぐことの必要性
キャリア開発とは、人生100年時代を自分なりに歩いていく際のセイフティネット。
資本主義社会の中でやはり稼がない、稼ぐことができないというのは自分の機会を失うことに繋がりかねません。
稼ぐことができないと与えられる機会が不平等になり、選ばれない人材になっていってしまう。
自分らしいやりがいを育てながら、でもある意味この段階までには自分の市場価値は高めて行くんだという方針が必要。
現代はSNSなどのお陰でインプットとアウトプットが実践的になってきた。
今の時代やりがい重視であれば、Youtubeやツイッターなどでなんでも発信できる。
よって、やりがいを重視するから市場価値が高まらないっていう項二項対立の考えはもう古い。
それぞれを両立させよう。
エンプロイアビリティという言葉があります。
これは雇用され続ける力を意味します。
現在においては必ずしも雇用される必要はありませんが、市場で価値を発揮するためにはさまざまな機会を味方に付けることが重要です。
稼ぐことによって、できる限りの機会損失を防ぎ最終的に自身のやりがいにつなげることが大切なんですね。
グレーの丸枠はセッション中の会話を要約して記載しており、筆者の見解ではございません。予めご承知置きくださいませ。
市場価値について考えることの必要性
自分の市場価値については週1程度で考えることが推奨される。
コロナもあった。
コロナ前、日本型雇用がこのままでは持たないことをトヨタの社長を始め各リーダーが公にメッセージを出した。
これからは自分たちのキャリア形成を自分で構築しなくてはならない。
そんな時代が来た。
その時に、ある意味「個人」が出てきたから何をやったらいいんだろうと迷い始めてしまう。
でも、悩んでいると時間だけ過ぎていく。
キャリアを悩む文化はもう卒業して、キャリアを「考える」文化をみんなで創りましょう。
ジョブ型、個人で稼ぐ時代。。
少子高齢化やコロナによる働き方の多様化により、働き方に関する私たちの認識は少なからず変わりました。
いきなり世に解き放たれたような感覚を得る人もいるかと思いますが、足を止めずに自分らしく働く道を見つけることが大切なんですね。
ハンセンの統合的人生設計
ハンセンは総合的なキャリアの発達・バランスのとれた人生実現をゴールとし、統合的人生設計(ILP:Integrated Life Plan)を構築した学者です。
彼女の理論の中で最も有名とも言えるのが4Lです。
4Lとは
- Love(愛)
- Labor(仕事)
- Leisure(余暇)
- Learn(学習)
人生の中で与えられている時間はみんな一緒。
それぞれのLに対する自己満足度を計測し、足りない部分をどう補うかを検討できる。
田中先生のこちらの書籍で実際にご自身の4Lの点数をつけることができます。
たとえば、Leisure(余暇)が足りないとなった場合、自身の週間スケジュールを眺めます。
そして、どの時間を上手くマネージして余暇の時間に当てれるかの検討を行います。
人によっては、空いた時間をリスキリング(再学習)に充てることができるかもしれません。
このように、4Lでキャリアコンディションをチェックすることはキャリア形成を行う上で非常に有効です。
キャリアは動的である
みなさんヨガやるじゃないですか。
趣味は継続して行いますよね。
キャリア形成も同じ。
キャリア形成を一度やって終わりにはならない。
そのために日常的にキャリアについて考えることを習慣すべき。
キャリアは変わり続けるんですね。
キャリアは、過去-現在-未来と一連の繋がりを持ち合わせています。
筆者としては、頻繁に軸を持たずキャリアを変える、いわゆるジョブ・ホッパーは控えた方が良い思います。
一方で、現在のキャリアに必ずしも固執・固定する必要はないという趣旨です。
キャリアは変えられる。
ぜひ能動的に動き続けたいところです。
やりたくないことリストのすゝめ
田中先生曰く、やりたくないリストは常に5つ持っていて良いようです。
自分がやりたくないことを可視化してやらない。
田中先生の場合は、自分が出なくても良い会議へ出席しないことと仰っていました。
自分の声に正直に。
そうすることで「持続的」なキャリア開発が実現できる。
これまでやってきたことは実績・足跡なので後から上書きはできないけど、これから実行することに関しては年齢問わずできる。
あまり働き過ぎると疲れてしまう。
喜びを投資していくべき。
これはお金の生きた使い方である。
休日を使って自身をトリートメントしてあげる。
休日にしっかりトリートメントできると仕事に復帰した時に元気でいれる。
つまり、キャリアは生き方と働き方の総合的なまとまり。
休み方を上手にデザインしましょう。
土曜日飲みに行って日曜朝二日酔いで、月曜出勤ではコンディションが整っていない。
田中先生はキャリアownershipを持って、自分のキャリアコンディションを整えていくことの重要性を訴えています。
上手に休むことは、上手に仕事をこなすコツでもあります。
筆者は土曜の午前中に体を動かす習い事に行ったり、日曜日はマッサージに行ったりとリフレッシュを心がけています。
また土日も本を読んだり資格勉強をすることで、少しでも自己成長につながるように時間を使っています。
「やらなくては」ではなく「やりたい・興味がある」ことになるべく時間を割くように意識しています。
キャリアポートフォリオ
今後、経済産業省や文部科学省などが動き出し、キャリアポートフォリオという概念が出来上がる。
キャリアが資産となる。
キャリア資産とは
- ビジネス資本
- 社会関係資本
- 経済資本
ビジネス資本
誰もが持っているビジネスを行うスキル。
撮影ができる、チームをまとめることができるなど。
新卒であろうが中途であろうが誰でも持っている資本。
社会関係資本
人脈などの他者とのつながり。
キャリア形成でどんな人とと繋がっているかは非常に重要。
社会関係資本と先ほどのビジネス資本の2つを持っている人がこの後ご紹介する経済資本に転換し得ると、田中先生は言います。
経済資本
読んで字の如く経済指標です。
たとえば不動産屋金融資産など。
つまり、ビジネス資本と社会関係資本を有していることで結果的に金銭的に有利になる。
経済資本ばかり追い求めて他の資本を蔑ろにすると、そのキャリアは持続しない。
だからこそスキルはもちろん、ネットワークも蓄積していかなくてはならない。
Volume of capital(資本量)という概念があり、同じ業務を長年行うと資本は一定で成長が見込みづらい。
つまり市場価値が高まっていない。
世の中で成功していると言われている人は、ビジネス資本、社会関係資本ともに所有している。必ず。
市場価値とは
市場はコントロールできない「ものの価値基準」。
自分でコントロールできない価値基準。
とすると、そこに向かって自分は何が準備ができるかと考える。
その時にどんなビジネス資本、どんな社会関係資本が市場価値をもたらすのかを考える。
これを週に1度、あるいは2週間に1度振り返るのが良い。
News Picksでは過去に年収800万円以上の人が持つ市場価値を調査したことがある。
こちらは100万件以上の履歴書を分析した結果です。
田中先生はこれらのワークタグの賞味期限を見極めることの重要性について言及されていました。
ビジネスシーンで今起きていることは、テクノロジーで代替されるようなスキルの市場価値低下。
例えば今で言うとこのプロジェクトマネジメントはAIに代替されにくい。
教育に関しても、例えばまあニューヨーク大学のある教授によると、50年後の教育関係者教育関連従事者がAI代替される割合はわずか8%。
一方でタクシー運転手は9割ほど代替される可能性がある。
市場価値は一定ではない。
ここでも価値は変化するのです。
筆者としては、変化を予測してそれに備えることはほぼ無理であると考えています。
よって、そのような変化に耐え得る、変化の中でも自分らしさややりがいを見つけられる素養を身につけておくことが有用だと思います。
筆者の場合は、経営コンサルタントとして働く傍ら、NPOの活動としてキャリアデザインをご支援させていただいています。
また自信の英語や中国語を生かしたボランティアへの参加。
イラストの趣味を活用して似顔絵を描いたり。
何がどこでつながるかわかりませんが、さまざまなところにアンテナを張って異質のコミュニティとつながることで、何かが生まれます。
時代の変化に合わせて自分も常に変化したい、変化することを筆者は意識しています。
グレーの丸枠はセッション中の会話を要約して記載しており、筆者の見解ではございません。予めご承知置きくださいませ。
キャリアレバレッジ
VUCAの時代。
VUCAとはVolatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。
そんな時代においては誰も持っていないスキルを作っていくことが重要。
田中先生は大学を卒業後、オーストラリア、米国に渡り博士号まで取得。
社会学博士を取得後、新たな分野であるキャリアデザインに携わったそうです。
しかし失敗も多かったと田中先生は語ります。
でもそんな失敗さえ財産であると。
キャリアデザインに携わったばかりの頃は、知名度もネットワークもなかったそうですが、そんな時こそ行動。
大学のリソースを活用しキャリアの道で有名な方をお呼びして、最終的にビジネス資本・社会資本を蓄積。
悩んでいて、「自分はこういうことができない」「今のままじゃ何もできない」といっている人は勿体無い。
学歴格差なんてのも微々たる誤差。
ただし、それ以降のビジネスキャリアを培っていく上での行動習慣は大きな格差になり得る。
今からでも間に合う。
筆者の好きな言葉に「今から始めるが一番早い」とう言葉があります。
あの時こうしておけば良かった。
なんであの時こうしなかったんだろう。
人は必ず後悔します。
でも過去は変えられません。
今から始めるのが最も早く何かに挑戦できるのです。
今からでも間に合う、田中先生のお言葉通りだと思います。
キャリアを意識すると幸福度が上がる?
キャリアを主体的に考えることで行動が変わる。
ハイブリッドワークであれば、始業前に音楽聞いてみるとか、好きな紅茶飲んで入るとか何でも良い。
自分でそれなりのルーティーンを作って、パフォーマンスを高める準備をすると良い。
アスリートは皆、ウォーミングアップをしている。
最高のパフォーマンスをするための方法は本質的に同じ。
ウォーミングアップをしないでみんな経営会議に入る。
準備をしないで入るから、どんどんキャリア負債がたまっていってしまう。
だからその時にどんな仕事であれ、やはり自分のものとして全うする。
そして、関わり合う人に思いやりやギフトを届けていくことで、必ずビジネ資本と社会関係資本が蓄積される。
行動が変わると社会関係資本も増えるから市場価値も上がってしまう。
ちなみに田中先生は、本セミナー登壇当日、朝から当日の流れをイメージいたそうです。モデレータの方が執行役員に就任したことをご存知で、スタジオに入る前にお花屋さんで花束を購入してプレゼントしたそうです。田中先生曰く、これが自分の時間に対する主体的な取り組み方だそうです 。大変素敵ですね。
仕事をやる目的
良い社会を作るため、よりよい未来を作るため。
これに尽きる。
仕事の目的が、お金を稼ぎたいだけであったら持続しない。
だから働くことを通じてなんか自分の可能性を伸ばすとか、まさにやりがいを感じることが重要。
例えば自分がやったことに対して誰かが喜んでくれたとか、何かやりたい問題解決できて実現できたとか。
こういうところに人はやりがいを感じる。
やりがいを感じて、ビジネス資本と社会関係資本にきちんと蓄積することができれば、最終的に経済資本も後からついてくるはず。
これは常に議論されている難しい問題ですね。
仕事にやりがいを感じていても常にやりがいを感じているとは限りません。
ふと立ち止まった時に、なんのために仕事をしているのだろう。。
そう考えることがあります。
お金の為ではないと言いつつお金がないと生活はできない。
でもお金だけあっても持続的な働き方はできない。
ゼロサムの、どちらか一方が正しいという議論ではないので、程よくやりがいも考えつつ、どうせなら少しでも好きなことで仕事ができたら良いなと筆者は考えます。
田中先生が考える適職とは
自分の可能性を最大化させるもの。
キャリアを静的に考えてはいけない。
キャリアは固定ではない。
適職診断で何が起きてるかというと、Aさんのの中に変わらない何かがあって、それを診断してそれに適合する職業を出す。
でも実際、キャリアはそれに当てはまらない。
なぜか?
キャリアで今必要なのは、世の中が予想できないほど変わっていることを考慮すること。
つまり、キャリアを動的に捉えて、適職はその時々で変化する。
動的に捉えて、コーリングと呼ばれる、「自分はこれだ!」と思えるような仕事に出会いたい。
そして自分の可能性を最大化して社会や未来に貢献して行くことが大切。
これには特にしっくりときました。
やりたいことは常に変わりますし、やれることも経験と共に変化する。
ましてやこれほどまでに変化の激しい現代においては、変わらないことが最大のリスクとも言えます。
キャリアも変化させて良いのです。
来るべきが来た時のためにキャリアについて定期的に検討する等、常に準備を整えましょう。
復職のすゝめ
適職は決まったものではなくて、キャリア形成の各段階において今の適職はこれなんだという風に決まる。
自分を可能性を合わせるために、アクションをし続けること。
この先に適職となるものが見えてくる。
今後のキャリア
人口マップを見ると2025年には団塊世代が後期高齢者に入る。
すると日本は慢性的に人材が不足する。
仮にこの際に1人で5人分働くとする。
年収1,000万円の人が5倍働いて年収5,000万。
市場価値を高めているように見えるが、身体は一つ。
労働集約型だと市場価値が上がる速度に限りがある。
その時に複業の重要性が出てくる。
もちろん目の前の業務集中してやること非常に大切なのだが、1つの職で年収500万円、600万円に増えて市場価値が高まったという錯覚に陥らないでほしい。
なぜならサンフランシスコでは1,800万円でも低年収とされる。
そういうグローバルスタンダードの中で我々日本国民は440万から470万の平均年収で高い低いと議論している。
もしくはボーナス出た、出てないと議論している。
その市場価値のレンズが極めてドメスティックになってしまっている。
だからこそ、やりがいをちゃんと全うしようと。
市場価値という、小さなレンズにとらわれるな。
社会価値を作れよ。と言いたい。
実に本質を捉えた議論です。
日本の枠だけで考えるのではなく、世界基準を頭の片隅にでもおくことでぐっと行動は変わります。
井の中の蛙になってはならない。
社会価値を作る。
一見、非常に壮大ですが、誰にでも社会価値を作ることはできます。
たとえば、筆者が何気なく行っているキャリア支援。
相談者のためになればとの一心で活動していますが、毎回、相談者さんから気づきを得ます。
「Taka(筆者)さんの活動は人を救う」
「友人にもおすすめしたい」
このように自信が思いもしないありがたいお言葉を頂戴することもあります。
小さなことでも行動を起こすことで、世界中の誰かがそれに反応してくれて、その積み重ねがモチベーションになり、より大きな良い影響を人や社会に与えるきっかけになる。
グレーの丸枠はセッション中の会話を要約して記載しており、筆者の見解ではございません。予めご承知置きくださいませ。
最後に
なんだかんだ好きに生きた方が良い。
同時に、社会動向と自分のキャリアを大事にしていくという意味での戦略性は練習した方がいい。
練習して、書き出して見える化して言語化すればするほどキャリアはよりよい状態になるから。
自分の手でキャリア状態をより良くできる。
ただし、社会や組織の中でのポジションというのは、自分ではコントロールできないので行動し続けよう。
自分で主体的に考え行動すると、幸せに近づきかかえって市場価値も上がる。
歴史的転換期を生きる我々の社会的使命として持続的なキャリア形成が挙げられる。
やり抜くこと。仲間と共に。
今から自分でキャリアを本当に作っていこうっていう風に思える時代だし、それをみんなで応援する時代。
まさに、キャリアデザイン。
自分で主体的に考え行動し、やりがいを見つけていく。
一見、これまでの終身雇用が崩壊し、厳しい世の中になったとも感じます。
しかし、キャリアについてより自由に、思いのままに選択できる時代になった。
人生においていくつもの自分と出会う機会に恵まれている。
そういった捉え方もできるのではないかなと思います。