自動車業界

EV先進国中国の深圳(深セン)で見たEVの発展

深圳は有数のグローバル企業が存在しているビジネス都市ですが、観光にはあまり向いていないかもしれません。

一方で、先進的な都市を体験したい方にはとてもおすすめです。

スマホ一つで移動はもちろん、あらゆる支払いが完結し、街中にはEV(電気自動車)が走っていたりと、多くの方がイメージする中国とは一線を画しています。

筆者は3日間滞在し、中国のEVメーカーであるBYD(比亚迪汽车)、Huawei(华为)、Xiaomi(小米)に訪問しました。

半分プライベートの旅行だったものの、BYDは事前にアポを取り企業訪問という形で3時間ほどカンパニーツアー+面談を実施いただきました。

BYDの訪問記事はこちら

こんな方におすすめ

  • EV(電気自動車)に興味がある方
  • 先進的なテクノロジーやサービスに関心がある方
  • 中国の新興企業の動向に興味がある方
  • 車の利便性や安全性に関心がある方

本記事の信頼性

たか

この記事を書いている私は、

  • 海外MBA進学・2度の転職経験をもとに自身が所属する香港の団体でキャリア相談を実施
  • SNSを通じてES・履歴書・職歴書・志望動機書に関するキャリアサポートを実施(合計30名以上)
  • 自動車業界に従事して10年弱
  • ドイツ勤務、外資系メーカーへの転職を経て、現在は外資系コンサルティングファームでビジネスコンサルタント職に従事

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2024年3月にEV参入した小米(Xiaomi)

HuaweiとXiaomiはスマホメーカですが、近年自動車業界に参入し、中国ではもちろん、世界的にも注目を集めています。

日本ではお目にかかることができないのであまりピンとこないかもしれませんが、 XiaomiはEV販売開始から1ヶ月後には7万台以上の販売台数を叩き出した、とてもポテンシャルのあるEVメーカーです。

筆者が訪問した2024年5月は、まさにXiaomiのEV販売から1ヶ月後でしたが、同時期に北京モーターショーが開催されていたこともあり、多くの外国人がディーラーに訪れていました。

ディーラーのスタッフによると、海外勢の多くはドイツ、日本、ロシアからだと言います。

Xiaomiのディーラーには3台のEVが展示されており、それらは1車種ですがグレードが異なるものでした。

ポルシェのタイカンに似たスポーティーなデザインがとても魅力的です。

ディーラーのスタッフによると開発・設計・生産の全てを北京で実施しており、最終組立も自社で内製しているとのことでした。

スマホメーカーが車を作ってしまうことには驚きですが、その完成度にも目を見張るものがあります。

スマホで培った技術をふんだんに活用し、社内のIVIデザインやソフトウェアの構成、音響、操作性、あらゆる部分が個々のユーザーに最適化されるように設定が可能です。

また、車両前方座席中央に位置するディスプレー(CID)ではスマホと変わらないアプリを使うことができます。

購入から1年間は無料、2年目以降は199元/年を支払うことでデーター量無制限で利用することができます。

TikTokや中国動画アプリであるbilibiliなど、さまざまなアプリが利用でき、これまでの移動体験とは全く異なる旅ができる可能性を強く感じました。

バッテリーは2社購買しており、グレードが3つあるうちの梅にBYDのブレードバッテリー、松竹にCATLのバッテリーを搭載しています。

ディーラーの外には4台ほどのXiaomi EVが駐車されていましたが、筆者がディーラーの中でスタッフと話をしていたわずか30分ほどで全て試乗のためにではからってしまいました。

それほど多くのお客さんがXiaomiディーラーを訪れていたということです。

同じスマホメーカーでEVにビジネスをピボットしたHuaweiとの違いについてお伺いしました。

そのスタッフは以前、アメリカのOEMであるキャデラックのディーラーに勤めていた方。

彼曰く、Huaweiの詳細を完全な理解できているわけではないが、Xiaomiの方が走行性能が良いとのことでした。

細かい内容も教えていただいたのですが、筆者の中国語レベルでは詳細を正確に理解できませんでした

中国の先進的なサービス

そういえば、Xiaomiのディーラーに向かう際、滴滴タクシー(中国版Uber)を利用した際に面白い体験をしました。

いつものように滴滴アプリでタクシーをホテルに呼び、行き先を設定して乗車しました。

乗車してから15分ほど経ったとき、筆者のスマホがなりました。

番号は「95066」。

電話に出ましたが何も反応がなかったため、イタズラ電話かと思い切りました。

電話を切るとすぐに同じ番号からSMSでメッセージを受信しました。

そこには以下内容が。

【滴滴出行】乘客您好,为了让更多人系好安全带,我们选择了打电话。方法可能有些打扰,但如果能因此让您系上安全带,一切都是值得的。这里还有一些想对您说的话,请点击查看:https://c.didi.cn/wL3cFEL

意訳すると「シートベルトをしていなかったようなので電話をかけました」という内容でした。

つまり、滴滴に乗った筆者がシートベルトをしていないことを検知し、シートベルトをするように促すために電話でコールしたというのです。

おそらく車載カメラで状態をモニターしていたのだと想像しますが、このような仕組みでシートベルトを占めるように催促するサービスは非常に新しく、ユーザーの気持ちを逆撫ですることなくごく自然にリマインドすることができる、優れた仕組みであると筆者は感じました。

滴滴アプリをアクティベートする際に、安全のために車載カメラを使ってユーザーの状態を監視することについて合意するよう言及されたので、おそらく車載カメラでシートベルト有無を検知しているのだと思います。

このような体験は数年後には日本でも当たり前のように施行される気がしていますが、初めてこのような仕組みを目の当たりにした筆者は度肝を抜かれました。

2年ほど前のプロジェクトで携わった「2030年を見据えた車両ソフトサービス策定」で計画したサービスの多くが中国で当たり前のように現実化し、さらにはプロジェクトで検討したシナリオよりもアドバンスドな内容が多く見られました。

やはり、これまで車づくりをしてきた伝統的なOEMにはない発想を素早く市場に出して顧客のフィードバックを開発に活かす中国OEMの先進性を認めざるを得ません。

Huawei EVのフラッグシップ展

Xiaomiの人気と機能性の高さに放心状態のまま滴滴タクシーを手配し、次に向かったのはHuaweiのディーラーです。

HuaweiのEVを体感したい場合は、以下に行くことを強くお勧めします。

  • 住所:深圳龙岗区隆平路与冲之大道交汇处坂田华为基地G区9栋
  • 営業時間:10:00-22:00
  • 地下鉄:10号线华为站E口步行940米

Huawei本社近くにある、一般人に公開されている広い庭のような場所があります。

見た目は完全にAppleですが、間違いなくHuaweiです。

中には6台ほどの車が展示されています。

内部は多くの人で賑わっていた

驚いたのは、後部座席搭乗者に対するユーザー体験の高さです。

操作は基本的にボイスコントロールで行うことができます。

前方の座席と後部座席の間にはスクリーンが収納されており、映画などを見る際にはスクリーンが降りてきます。

後部座席には昇降式スクリーンが

スクリーンがあるということは当然プロジェクターも搭載されており、3列目シート前方上部に小さなプロジェクターを確認することができました。

さらに運転席の斜向かいに位置する2列目シートはほぼフルフラットになります。

筆者も実際に体験しましたが、車の中の景色とは思えないほどの異空間で非常に驚きました。

中国人のおじさまたちもリクライニングにご満悦

ショールームには自前のEVチャージャーも展示されていました。

ボイスコントロールで操作が可能とお伝えしましたが、そのボイストーンもカスタマイズ可能です。

Siriのようなお堅い口調から、子供のような少し幼稚な口調まで設定が可能です。

前方ディスプレーは運転席から助手席までシームレスに伸びる一体型のものが多く、車と言うよりも家電的な印象が強かったです。

助手席まで伸びるディスプレイ

機械としての走りの質を求める人口が減少した今、移動中にどんな体験ができるかを重視するユーザーにはとても刺さる車だと思います。

まさに中国の新興EVメーカーは、「良いクルマ」を再定義したと言っても過言ではないでしょう。

実際平均年齢が30歳前半と言われる深圳では、多くの若者にこのEVの移動体験とデザインが受け、筆者の体感でも走行車両こ7割近くがEVであったと感じました。

友人が所有するXPengのEV

大学院時代のクラスメイトとランチに行った際、彼女はXPeng(小鹏)のEVに乗っていました。

友人が運転するXPengのEV

なぜEVにしたのかと聞くと、まずデザインが可愛いとのこと。

次にEVはナンバープレート購入を待たなくて良いことが大きいと言っていました。

通常、ガソリン自動車の場合、ナンバープレートの購入に数百万かかることもあり、かつお金を支払っても抽選で当たらない限りナンバープレートを購入することができない。

ナンバープレートが購入できないと当然車を運転することはできないので、中国で車を運転する際のボトルネックはナンバープレートと言っても過言ではないでしょう。

一方でEVは国が強力なバックアップをしていることもあり、お金さえ払えば容易に車を運転することができます。

そういえば、ランチをした中華料理屋の地下駐車場でいくつか驚くべき機能を見せてもらいました。

一つは駐車場を探しているとき、ADASを使って走りながら空いているスペースを見つけると駐車スペースとしてCID上で推奨してくれます。

これにより薄暗い地下でも効率的に駐車スペースを探すことができます。

次に、ランチを食べ終わって帰るとき、駐車場のどこに車を停めたかわからなくなってしまったのですが、その際に車から音を発することで駐車位置を確認することができました。

中国都市部の駐車問題として、人口の割にそもそも駐車スペースが足りないので、地下駐車場ひとつとっても、駐車場が何層にも分かれ、1階のスペースも広大であることから、どこに停めたかよく迷います。

そんな状況で車から音を発し駐車場所を確認できるのはとてもありがたい機能だと思います。

最後に、駐車した車を見つけて、いざ乗車しようとしたところ、横の車がギリギリに停めていたので、乗り込むことができませんでした。

すると、彼女はおもむろにスマホを取り出しました。

その数秒後、無人の車が自動で前に1.2メートル出てきたのです。

先ほどの通り中国では駐車スペースが足りないので、駐車がキチキチになりがち。

そんな時に、運転手が乗り込まずとも車が前に出てくれると、問題なく乗車することができます。

さすがEV先進国の中国、本当に驚きました。

そしてそれらの機能を、クルマに興味がない私の友人が、まるでスマホを触るかの如く当たり前に操作しており、最新機能がここまで市民に浸透していることに圧倒されました。

まとめ

深センは世界的なビジネス都市であり、そこには多くのグローバル企業が存在しています。

しかし、観光地としての魅力はあまり高くないかもしれません。

それでも、先進的な都市の体験を求める人にとっては非常に魅力的な場所です。

この記事では、筆者が深センでの3日間の滞在中に訪れた、中国の主要なEVメーカーであるBYD、Huawei、Xiaomiについて触れました。

Xiaomiのディーラーでは、スマホメーカーが手がけるEVの完成度や利便性に驚かされました。

スマホで培った技術が随所に活かされており、ユーザーにとって最適な体験を提供しています。

また、滴滴タクシーのようなサービスも、ユーザーの安全を考慮した革新的な取り組みとして目を見張るものがあります。

HuaweiのEVもまた、その先進性やユーザー体験の高さが強調されています。

ボイスコントロールやプロジェクターなど、車内での新しい体験が提供されています。

さらに、深センの地下駐車場での新しいテクノロジーやサービスにも触れてみました。

ADASを使った駐車スペースの推奨や、車から音を発して駐車位置を確認する機能など、ユーザーの生活をより便利にする取り組みをご紹介しました。

これらの体験から、中国の新興EVメーカーがクルマの概念を再定義し、ユーザーに新しい価値を提供していることが伝わってきます。

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