そんなお悩みにお応えします。
結論:管理職・マネージャーが部下やチームをリードする上で、カウンセリング力が求められると言われています。同じ指示や依頼をお願いしていても、言い方ひとつ、やり方ひとつで部下や後輩たちのモチベーションはまったく変わってきます。 ここでは指示を出す時、依頼をする時に気をつけたい心理テクニックを紹介していきます。
本記事の内容
- カウンセリングとは
- カウンセリングの目的
- カウンセリングの技法(テクニック)
本記事の信頼性
この記事を書いている私は、
- 海外MBA進学・2度の転職経験をもとに自身が所属する香港の団体でキャリア相談を実施
- SNSを通じてES・履歴書・職歴書・志望動機書に関するキャリアサポートを実施
- ドイツ勤務、外資系メーカーへの転職を経て、現在は外資系コンサルティングファームでビジネスコンサルタント職に従事
本記事は、筆者の経験に加えこちらの書籍を参考に執筆しています。
(本ページは一部プロモーションが含まれています)
カウンセリングとは
言語的及び非言語的コミュニケーションを通して行動の変容を試みる人間関係である。
國分康孝
クライアントの個性や生き方を尊重し、クライアントの自己資源を活用して、自己理解、環境理解、意思決定及び行動の自己コントロール等の環境への適応と対処などの諸能力を向上させることを支援する専門的支援である。
一般社団法人 日本カウンセリング学会
みなさんは、カウンセリングとガイダンス、コンサルティングの関係性について明確でしょうか。
カウンセリングは問題や課題を明確化するまでの手法で、ガイダンスは課題発見後の解決に向けた手法を指します。
そしてカウンセリングとガイダンスを含めた一連の手法をコンサルティングと呼びます。(下図参照)
カウンセリングの目的
カウンセリングの目的は何か正解をカウンセリー(カウンセリングを受けに来た人)に与える事ではなく、自己理解を深めて相談者自ら意思決定や判断・調整を行い、自律できるように支援することです。
つまり、個人のより良い適応と成長、個人の発達を支援し、具体目標の達成を目指すことを成果としています。
ビジネスのシチュエーションでは管理職として正論を振りかざすことはありますが、その前に意識することがあります。
それは『情』です。
正論を通す前に、正論を受け取る側と良好な関係を築く必要があります。
良好な関係を構築するためにまずは部下の情を受け入れることが重要です。
情を受け入れるとは具体的に相手の発言を否定しないことです。
先ずは部下の話を肯定的に受け入れる事を意識しましょう。
カウンセリングのアプローチ4つ
- 感情的アプローチ
- 認知的アプローチ
- 行動的アプローチ
- 包括的・折衷的アプローチ
感情的アプローチとは、その名の通り感情の果たす役割を重視し部下や相談者の話しを聴くことです。
相談者の感情を豊かにすることで、「人は自分の感情に真に触れれば、十全に発達し自己実現することができる」と考えることを目的としたアプローチです。
部下や来談者の話しに耳を傾け、彼らが自分で課題を解決するように促します。
思考過程を重視するのが認知的アプローチです。
クライエントが抱えている問題や混乱は、その人がそのことをどう考える(認知)かによるとの考えに基づいています。
発生した事象そのものではなく、その事象をどのように受け止めるかに注視し課題解決に導くアプローチです。
問題解決を妨げている部下や相談者の「行動」に注視して課題解決を促すものが行動的アプローチです。
感情や認知は行動からくるものであるので、行動を分析しそれらに対処することで自己解決を達成するといった考えに基づいています。
上記3つを組み合わせたものが包括的・折衷でアプローチです。
カウンセラーになるための必要条件
アメリカ合衆国の臨床心理学者であるカール・ロジャーズによると、カウンセラーになるためには次の4つが必要と提唱されています。
- 無条件の肯定的関心(受容的態度)
- 共感的理解
- カウンセラーの自己一致(純粋性/誠実さ)
部下や相談者をカウンセリングする際には、入り口から相手を否定してはいけないとされています。
さらに相手の発言に対し共感することが求められます。
ここで注意が必要なのが、求められているのは共感であり同感ではないという点です。
同感は本人と同じようになってしまうことですので、例えば相手が感情的になり泣いてしまった際にカウンセラーも一緒に泣いてしまうようなケースを指します。
この状態になると課題解決の支援ができないことに加え、後になってアドバイスを行う際にカウンセラーとしての意見を伝えにくくなります。
あくまで「あたかも」そうなったかのように相手に寄り添い話しを聴いてあげることが必要です。
最後のカウンセラーの自己一致についてですが、こちらは精神の安定を指しています。
人は理想の自分と現実の自分が一致していればしている程、精神が安定していると言われています。
相談を受けるカウンセラーの精神が安定していない時にはカウンセリー(相談者)の相談に乗るべきではないと定められています。
カウンセリングの技法
相談者に対し言語追跡を行いながら会話を促し、自己問答・自己探求を促す技法をご紹介します。
この技法はしばしば、カウンセリングに於いて「傾聴の連鎖」と呼ばれます。
基本的傾聴の連鎖
- 励まし
- 言い換え
- 要約
- 感情の反映
励まし
ここで言う励ましとは、「がんばれ!」と応援することではなく、相談者の語りを促すことを指します。
目的はあくまで相談者の自己探求を促すことです。
相手の話に対して、頷き(非言語的反応)や相槌(言語的反応)で応答します。
この際相談される側は、沈黙を恐れてはいけません。
沈黙中は相談者が考え自己探求をしていることもありますので、沈黙を恐れて次々に相談者へ質問することは控えます。
言い換え
相談者の発言の内、本質のみを抽出し言語化しで繰り返すことを指します。
相談者の語りを正しく理解し、その本質だけに応答してあげます。
例えば次のような例です。
言い換え
相談者の語りを正しく受け取り、そのキーワードに敢えて少し言葉を付け加えてあげることがポイントです。
このようにすることで、相談者は安心し、また自分の中でもやもやしていた内容をクリアに消化することに繋がります。
要約
その名の通り、相談者の会話を端的にまとめることを指します。
相談者の会話の中でキーとなる要素やテーマを捉えて明確にしてあげます。
話をまとめる際には、相談される側の価値体系や経験等のフィルターで歪曲しないように意識します。
要約することで相談者の言いたいことを明確にする支援ができますし、相談者の発話内容を正確に聞いていることを示すことが可能となります。
感情の反映
相談者の感情面に焦点を当てて、話の根幹にある相談者の感情を汲み取り言語化してあげることが目的です。
意識すること4つ
- 感情の命名
- 情動の指摘
- 言い換えで明確化
- 今ここの感情に働きかける
言語・非言語を通して伝わってくる感情を感情用語(悲しい・楽しい・苦しい等)を使って表現します。
また、人間は断定されると反対したくなる生き物なので、なるべく「そのことについてあなたはつらいと感じられているのでしょうか」など確認を含めた疑問形で情動を指摘します。
さらに、「あなたはXXのときYYと感じるのですかね」等の言い換えを併用して、状況を特定しながらさらに内容を明確化します。
最後に、カウンセリングの父であるカール・ロジャーズが唱えるように、過去ではなく今にフォーカスして相談者の悩みを聴くことが重要です。
まとめ:カウンセリングスキルを磨いて頼れる上司になろう!
自分は上司・先輩なんだからと部下や後輩達と壁を作らず、同じ集団に属しているという気持ちを持って接することで、仕事の指示や依頼はグッとスムーズになることでしょう。
話しを聴いてくれる上司である認識を部下に持ってもらい、信頼関係を構築することがスタートです。
信頼関係が構築されると、何かあった際に部下から相談に来るようになります。
相談を受ける際に、今回ご紹介したような点を意識し、頼れる上司として相談者の自己解決を促しましょう。
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