自動車業界

話題のEVメーカー、BYD(比亜迪股份有限公司)深圳本社へ行ってみた

自動車産業の幅は広く日本雇用の1割、日本GDPの1割ほどを支えているとされているこの業界。

キャリア相談をしてくださる方の中にも自動車業界のバックグラウンドをお持ちの方や、自動車業界に貢献したい想いを抱いている方がたくさんいます。

かく言う私ももともと自動車業界におりました。

そんな自動車業界で話題の電気自動車(以下、EV)。

その中でも、EV販売台数でこれまで1位だったテスラを抜き、新たな王者となったBYD(比亜迪股份有限公司)について、この度素敵なご縁をいただき、通常一般者としては入室することができない、中国深圳にある本社へお邪魔することができました。

せっかくですので、そのときの様子をご紹介したいと思います。

こんな方におすすめ

  • 自動車業界や新技術に興味がある方
  • 環境に配慮したモビリティに関心がある方
  • BYDに興味があり、その事業展開やテクノロジーについて知りたい方
  • 中国の先端企業の動向に興味がある方
  • 技術革新やビジネス展開に関する情報を求める方

本記事の信頼性

たか

この記事を書いている私は、

  • 海外MBA進学・2度の転職経験をもとに自身が所属する香港の団体でキャリア相談を実施
  • SNSを通じてES・履歴書・職歴書・志望動機書に関するキャリアサポートを実施(合計30名以上)
  • 自動車業界に従事して10年弱
  • ドイツ勤務、外資系メーカーへの転職を経て、現在は外資系コンサルティングファームでビジネスコンサルタント職に従事

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(本ページは一部プロモーションが含まれています)

本記事はBYDさんのご好意により実現した本社訪問時に、社員の方よりご説明いただいた情報をベースに執筆しております

筆者のキャリアサポートを受けて転職を成功した方からいただいた声をこちらにまとめています!

BYD本社へ到着!

深圳市内の福田区という地区から電車とバスを乗り継ぎ1時間ほどでBYD本社が位置する龙岗区というところにやってきました。

本社入口はさまざまな経済誌で見たこのある赤文字の中国語で書かれた壁がとても印象的です。

本社の中に入ると、ロビーにはBYDの車と来客者を歓迎する電光掲示板が。

展示車両

展示車両を見ていきましょう。

海豹/Haibao U DM-i

BYDの新たなスポーツセダン、「SEAL(海洋)」です。

この車両は300万円台という手頃な価格でありながら、最新のテクノロジーが満載です。

まず、15.6インチの大型ディスプレイは、BYDが自社で開発したものです。

このディスプレイはメーターと一体化しており、操作性に優れています。

さらに、アンドロイドOSが搭載されており、スマートフォンと同様の使いやすさを提供しています。

特筆すべきは、ボイスコントロールモードの搭載です。

車内で「你好小迪(ニーハオシャオディ)」と声をかけることで、目的地までの行き方や社内空調など、様々な設定を音声のみで正確に制御することができます。

日本では、「Hi BYD」と話しかけることで同様の機能を利用できます。

さらに、EEアーキテクチャは、テスラと同様の統合ECUを採用しており、高度なパフォーマンスと安定性を実現しています。

これにより、快適で安全なドライビング体験が提供されます。

YUAN PLUS(元)

こちらは300万円台のコンパクトSUVです。

豹5


このオフロードSUVは、驚くほどのパワーと堅牢な性能を兼ね備えています。

まず、そのサイズに注目です。全長4890mm×全幅1970mm×全高1920mm、そしてホイールベース2800mmというサイズは、しっかりとしたボディを持ち、さまざまな路面状況に対応できることを示しています。

さらに、このオフロードSUVの価格は28万元(約600万円台)となっています。

これは、その高い性能と装備を考えると、非常に魅力的な価格設定です。

この車両はDMOプラットフォームを採用しており、PHEV(プラグインハイブリッド車)としての性能も兼ね備えています。

DMとはデュアルモードの略であり、Oはオフロードを意味します。

このプラットフォームの採用により、オフロード走行時にも優れたパフォーマンスを発揮します。

このオフロードSUVは、自然の中で冒険を求める人々にとって理想的なパートナーです。

その堅牢な性能と革新的なテクノロジーが組み合わさったこの車両は、最先端のモビリティを提供します。

テンツァD9(腾势D9)

BYDとメルセデス・ベンツが9:1の資本割合で立ち上げた新ブランドがテンツァ。

この新ブランドは、ミニバン市場に進出し、その存在感を示しています。

まず、この新ブランドが投入するミニバンは、トヨタのアルファードに酷似しています。

アルファードは、そのスタイリッシュなデザインと高級感溢れる内装で人気を集めていますが、この新ブランドのミニバンも同様の魅力を持っています。

価格帯は30万元(約600万円)となっており、その性能や装備を考えると、非常に魅力的な価格設定と言えます。

この価格で提供されるミニバンは、高い品質と快適さを兼ね備え、多くのユーザーからの期待が寄せられています。

また、BYDとメルセデス・ベンツが共同で立ち上げたという事実は、この新ブランドの信頼性と期待値を高めています。

両社の技術とノウハウが組み合わされることで、より優れたミニバンが生まれることが期待されています。

この新ブランドのミニバンは、ファミリーカーとしての機能性や快適性だけでなく、洗練されたデザインや高度な安全機能も兼ね備えています。

BYDの歴史

入り口の車両展示ゾーンを抜けると、大きな電子パネルが姿を表します。

BYDは、1995年に深圳で20人のチームからスタートし、その後急速に成長しました。

1996年には電池の生産を開始し、2002年に香港で株式上場を果たしました。

2003年には、国有企業の西安秦川汽車を買収し、自動車業界へ参入しました。

2009年には、電動バスの生産を開始し、2010年にはメルセデス・ベンツとの合弁事業を立ち上げました。

2011年には、深圳でも株式上場を果たし、2016年にはモノレールの生産を開始しました。

そして、2020年にはブレードバッテリーの量産を開始し、2021年にはDM-i(Dual Mode intelligent)を発表しました。

2022年には、NEV(新エネルギー車両)の生産が300万台に達成しました。

さらに、2023年には新たなマイルストーンが達成され、仰望(ヤンワン)というハイエンドブランドを立ち上げ、100万元(約2000万円)クラスの車両を展開することが発表されました。

これらの歴史的な出来事は、BYDが持続的な成長と革新を遂げてきたことを示しています。

当時の自動車参入戦略

BYDの自動車産業への参入戦略は、独自のアプローチを取っています。

特に乗用車セグメントにおける参入障壁が高かったため、最初は商用車両に注力しました。

その戦略の一環として、タクシー会社への出資や車両提供を行い、まずはBYDの車を使ってもらうことに焦点を当てました。

実際、深圳のタクシーは全てBYD製の青と白の車両で統一されていることからも、この取り組みの成果がうかがえます。

中国の新鮮に住む人々に話を伺ったところ、BYDと行政が契約を結び、深圳でBYD製タクシーを利用することになっているとのことです。

このようなパートナーシップを通じて、BYDは自動車市場において独自の地位を確立し、ブランド認知度を高めています。

BYDの4大事業(計6,000億元/2023年)

BYDは、2023年において6,000億元の売上を上げる四大事業を展開しています。

自動車

まず、自動車部門が最も大きな部門であり、全売上の60%を占めています。

この自動車部門では、OEM(自動車メーカーへの部品供給)やサプライヤー(Tier1およびTier2)の活動も含まれています。

特に、ブレードバッテリーはテスラやXiaomiなどのOEMへも供給されている名品です。

2023年時点でのEV累計販売数は700万台に達しています。

このうち、海外向けが40万台で、中国国内向けが660万台です。

特筆すべきは、2021年以降にEV製造を開始し、さらにEV部品の外販が増加したことで、BYD全体の売上が約2倍に増加したことです。

鉄道

次に、鉄道部門は売上の8%を占めています。

新エネルギー

新エネルギー部門は売上の10%を占めています。

電子部品

電子部品部門は売上の22%を占めています。

金型から製造までを自社で行っており、年間2億台のスマートフォンに部品を提供しています。

この部門では、XiaomiやHuaweiなど、様々なスマートフォンメーカーの部品を開発・生産しています。

今後は、電波を通しやすくするためにセラミック製の部品が増加する見込みであり、当然、これらのセラミック製部品もBYDで生産されます。

これらの事業を通じて、BYDは幅広い分野での事業展開を行い、持続的な成長を遂げています。

BYDの売上

BYDの売上における駆動源の割合は、PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)とEVが5:5とのことです。

BYDはピュアEVメーカーとしての印象が強いかもしれませんが、実際にはガソリン技術も有しており、PHEVの販売も好調です。

それでも、2024年3月時点で売上の50%以上がNEV(新エネルギー車)という事実がBYDの進化を物語っています。

BYDの強み

20年以上に亘り培った堅牢な車両開発技術力

BYDの強みは、20年以上にわたり培った堅牢な車両開発技術力にあります。

2003年から自動車を生産してきた経験やテスラと同様の統合ECUを採用するなど、その技術力は高く評価されています。

約70%の高い内製率

また、約70%という高い内製率も特徴であり、ほとんどの部品を自社で生産しています。

これには、タイヤとガラス以外ほとんど部品が自社製です。

タイヤはコンチネンタル製を主に採用しています。

BYDの部品をコンチネンタルの部品に使うケースも多く、持ちつ持たれつの関係を築いています。

BYDの電池は有名ですが、驚くべきことにリン酸や鉄などの電池材料からBYDで製造しているとのことでした。

ただし、何でもかんでも内製するわけではなく、他社ときちんと競合を行い競争力のある領域を内製しています。

CEOである王伝福氏は車好きであり、安全性能からデザインまで車に対するこだわりが強いです。

そのため、内製を実行するために、その分野のスペシャリストを採用しています。

また、BYDはハードウェアだけでなく、ソフトウェアやUI/UXデザインも自社で実施しており、女性向けの車室空間の快適さにも注力しています。

そして、他社との競合を行い競争力のある領域を内製しています。

3万件の特許保有数

特許数も多く、2024年4月時点で4.8万件の特許を申請しており、技術に対する投資を継続しています。

1日あたり、27件の特許出願を目標としているとのことでその勢いの凄まじさに思わず引いてしまいます。

技術に対する考え方として、投資後のリターンは直近を見据えておらず、5年10年先の将来を見据えた投資を意識しているとのことでした。

6つの強みを兼ね備えたブレードバッテリー

BYDはブレードバッテリーを採用し、その低価格で高性能なEVバッテリーが代名詞となっています。

寿命・安全性・コスト・航続距離・強度・馬力の6つにおいて強みを持ちます。

このブレードバッテリーにより、車載ハーネスを削減することができ、車両重量の軽減にも貢献しています。

優秀人材の獲得

BYDはまた、優秀な人材を獲得することでも知られています。

技術者の多さや、主体性を持って仕事を全うする社員が多いことが特徴です。

従業員70万人のうち10万人が技術者だそう。

教育を受けた若手社員にプロフェッショナリズムを持たせる文化も根付いています。

当日実際にアテンドしてくれたのは課長に加えて、入社1年目と3年目の方であり、若手2人がメインで説明し、補助を経験豊富な課長が実施する体制でした

インフラからEVまで一気通貫

そして、インフラからEVまで一気通貫で提供することで、中国での躍動を成功させています。

ソーラー発電、蓄電、EVまで通気一貫で自社にてサービス提供可能です。

BYDはモノレール事業にも参入しており、BYD敷地内には2本のモノレールが開通しています。

1本はモノレール購買者向け試乗・商談用であり1本は従業員の移動用です。

企画から量産まで18ヶ月という圧倒的な開発スピード

さらに、企画から量産までわずか18ヶ月という圧倒的な開発スピードも持ち合わせています。

アジャイル開発を行い、顧客ニーズをビッグデータとして収集・解析し、素早く商品を提供しています。

中国では市場トレンドの変化が速い中、BYDはトレンドが変わる前に商品を提供することが可能です。

今回説明してくださった方曰く、上司に判断を仰いだ際にどんなに遅くとも次の日には意思決定がされているとのことでした

コネクテッドサービス

BYDのコネクテッドサービスは、ユーザーに優れた体験を提供することを第一に考えています。

車両購入から6〜8年間は、2〜5GB/月のデータ通信を無料で利用できます。

もちろん、この期間中に当該容量を超過した場合は有料になりますが、ユーザーが利便性を求めるなかで、データ通信に関するストレスを最小限に抑えることを目指しています。

さらに、10GB/月のプランやBilibiliなどの特定のサービスに紐づく通信プランも提供されています。

また、デザリングも可能であり、ユーザーが自身のデバイスを接続してインターネットを利用することができます。

BYDは、利益追求よりもユーザーへの価値提供を優先しており、サブスクリプションなどのサービスで収益を上げることを主眼としていません。

そのため、高品質なコネクテッドサービスを提供し、ユーザーの利便性と満足度を最大化することに注力しています。

BYDでの働き方

BYDでの働き方は、独自の魅力と制度があります。

まず、技術者の方が非技術者に比べて残業時間が多い傾向がありますが、その一方で労働環境は工夫されています。

例えば、8時間×3名の交代制が採用されており、働くスタッフにとって効率的なシフト体制が整っています。

また、BYD社内には食堂が存在し、社員だけでなくその家族も自由に利用できるため、働く人々とその家族の生活を支える環境が整っています。

さらに、BYDは社員寮を充実させており、深圳という高級住宅街に関わらず、家賃は毎月1万円以下という手頃な価格で住むことができます。

この取り組みにより、若手スタッフも安心して生活できる環境が整っています。

また、BYDは幼稚園も運営しており、これは社員だけでなく地域住民も利用できます。

この幼稚園は高い教育の質が話題となり、地域住民からも入園希望が殺到しているほどです。

これにより、BYDは社員の家族を含めた支援体制を充実させ、働く人々が安心して活躍できる環境を提供しています。

中国新卒の厳しさ

帰路、BYD若手社員の方に近くの駅まで送っていただきました。

車内で就職活動はどのようなものかお伺いました。

中国では一流大学を卒業しても就職先が見つからないというニュースはとても有名ですが、実態はどうなのでしょうか。

彼ら曰く、新卒の就活は極めて厳しいとのこと。

BYDは書類審査の後に2回の面接があり、それらに合格すると内定が出る。

プロセスは日本と類似していますが、中国の新卒者数は約1,000万人

日本のそれが40万人とも言われていますから、単純計算で20倍以上も規模が異なります。

2人の社員の方にお話を聞いたのですが、2名ともBYDが第一志望とのことで厳しい競争を勝ち抜いた紛れも無いエリートです。

まとめ

BYDの本拠地に足を踏み入れると、そこには自動車産業の未来を築く情熱が息づいています。

シンプルな外観の建物の中には、最先端のテクノロジーが融合した車両が誇らしげに展示されています。

BYDの技術力は単なる自動車メーカーを超えています。

EEアーキテクチャやDMOプラットフォームを採用するPHEV(プラグインハイブリッド車)、そしてテンツァD9(腾势D9)など、最新のテクノロジーが車両に搭載されています。

これらの技術を用いて、BYDは常に時代の先端を走り続けています。

また、BYDは自動車産業だけでなく、鉄道や新エネルギー、電子部品など、多岐にわたる事業を展開しています。

そして、積極的な技術への投資と革新的なアプローチにより、ますます多くの人々にその存在感を示しています。

BYDは単なる自動車メーカーではなく、未来のモビリティを築くリーダーとして、常に挑戦し続けています。

その姿勢が、自動車産業のみならず、さまざまな産業に影響を与えることでしょう。

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